第37章 不機嫌な萌黄に八雲謝る、の巻
「どうして炎柱様と喧嘩になるんですか?意味がわからないんですけど……」
「本当にすみません…返す言葉もございません」
杏寿郎さんと仲直りして、2週間後の昼下がり。場所は彼女と落ち合う時にいつも利用する甘味処。
私は後輩隊士の藍沢沙希の目の前で平謝りしている。
肩より少し長い髪の上半分は団子結びにして、萌黄色の玉簪を挿している。真っ直ぐと切り揃えられた前髪は艶々。
これが沙希の外見。
女の子らしい女の子だけど、カナヲ同様可愛いだけじゃない。
隊士としても非常に優秀で、使う霧の呼吸の改は何と最終選別で編み出したらしい。
半泣きで挑んで何とか生き残った私とは大違いなんだよね。
「七瀬さんのそそっかしさは相変わらずですね。でも今回の件がよりお2人の絆を深めたようですし、いわゆる”雨降って地固まる”ですね」
「沙希ちゃん、もう好きなだけ頼んで良いよ」
わあ、本当ですか?とお品書きを手に持って選び始めた彼女の指先には桜色の爪紅が綺麗に塗られている。
そんな沙希に会う…と言う事で、今日は私も爪紅を塗って来た。色は緋色でこれは杏寿郎さんの瞳の色だ。