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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第6章 諦めないこと、続けること、信じること



そして30分経った頃。

「……王手」と冨岡さんが静かに言う。

あ……回避する駒が無くなった……“詰み”だ。

「参りました」と言って、頭を下げる。
これで対局は終わりだ。

カナヲの手合わせの時と同様に、冨岡さんとの詰将棋も大体私が負ける。

本当に張り合いがないんじゃないかと思うけど強い弱いはあまり重視してないようで。相手がいる、と言うのが良いらしい。

そんなものなのかな?一緒にやってくれるのはありがたいし、嬉しいのだけど、これで勝てればねぇ。


「沢渡、食べていってくれ」

色々考えてる間に冨岡さんがお茶と一緒に私の好物のカステラを持って来てくれる。

先日、行きつけのお店で久しぶりに買って来たカステラを全部伊之助に食べられると言う出来事があった。

めったに怒る事のない私だけど、この時は珍しく取っ組み合いのケンカをしてしまった。

いくら高級菓子だからと言って流石に大人げがなかった、と愚痴をこぼした事を覚えててくれたらしい。

さっき愛想がもう少しあれば……と言ったけど、こういうさりげなく優しい所は彼のとても良い部分だと思う。


「ありがとうございます。頂きますね」

カステラを口に含むと程よい甘さが舌を満たしていく。
「んー。美味しい!」

「…………………桐谷が亡くなって3ヶ月か。お前はもう大丈夫なのか?」

冨岡さんが私の横でカステラを完全に飲み込んでから聞いて来た。
そうだ。彼は食べながら会話が出来ないんだった。



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