第2章 紫電一閃、青天の霹靂 ✴︎✴︎
「壱ノ型 ——— 霹靂一閃」
それは正に電光石火と言う言葉がぴったり合う剣技だった。
自分の目の前にあった背中が、鬼が立っていた位置をすり抜けていった。ドォォン……と雷が落ちたかのような音と共に、だ。
わずか一瞬の事である。
「ふーん……速さはなかなかのものだな。ひょっとして柱か?」
「もうすぐなる予定だ。おい、お前どこから話してる?」
たった今。
彼は恋人の刃に頸を切り落とされた。そんな状態だと言うのに、ど聞こえて来るのは鬼の話し声だ。
「え?……どうして??」
「くそっ!……血鬼術か!」
「正解!今のが俺の得意とする幻術ってやつだ。残念だったな。お前が斬ったのはこいつだよ」
スーッと鬼の姿がぼやけた。
「あっ……」
「そんな!」
そして現れたのは、私達と先程まで一緒に戦っていた先輩隊士の姿だった。
けれど、彼の顔は首から上がなかった。その後ろに立っているのは銀色の髪をたなびかせた鬼だ。
あの人、倒れてたけど息がまだあったのに……!
鬼はこときれている先輩隊士の体をトンッ.....と後ろから押し、地面にどさりと倒す。
そして右手に付着している血をひとなめすると、ニヤッと笑った。
「悪くない味だ……まあまあだな」
再び彼は、右掌に炎をボウっと灯す。
「血鬼術——— 」
「炎心・蜜(えんしん・みつ)」