第33章 風柱・不死川実弥 +
「あれ、何つったかなァ、程よく…何とかを制すとか言うヤツ」
「ほどよく……?制す……」
実弥の問いかけを受け、顎に手をかけた杏寿郎は己の思考回路を最大限に稼働させ、答えを探す。
これか? ——— 確信を持った炎柱は、横に座る風柱へ口を開く。
「君の言いたい事は、よもや “柔よく剛を制す”か?」
「それだ! 全然掠ってねぇな、俺。沢渡の太刀を一言で言うなら何か考えてたんだよォ」
「ふむ、奇遇だ! 俺も彼女に全く同じ事を言った事がある!そうしたら俺はな……」
”剛よく剛を制す”では?
杏寿郎は継子にそう言われたのだと、実弥に伝えた。
「はっ、何だよ? そりゃ。シャレかァ?」
「いや、シャレではなく実際にそうだと。確かに言ったのだ」
「剛よく剛をか……あいつ、やっぱ面白れぇなあ」
柔よく剛を制す……柔軟性のあるものが、そのしなやかさによって、かえって剛強なものを押さえつけることができる。
そんな意味の用語である。
「煉獄はしなやかさもあるにはあるが、どっちかつったら力強い太刀だかんなァ」
「不死川もそうだろう! 君は技術は高いが、太刀も力強い」
「んじゃ俺もあいつが言う所の”剛よく剛を制す”ってヤツかねェ」
柱二人は今この瞬間 ——— 同じ事を共有していた。
それは何かと言うと……
「お前、後どれくらい時間あんだよ」
「む? そうだな……後二十分程ぐらいだろうか」
「そんぐらいありゃ、充分だァ。付き合えよ」
「承知した! 師弟でそれぞれ君と一戦交える事になるとはなあ」
「面白れェじゃねえか。俺はもう気が逸って来たぜ」
静かに闘気を高めていく風柱と炎柱、である。