第31章 風を知り、岩を知り、そして全呼吸の理(ことわり)を知る
コツン、と私と彼のおでこが合わさる。
……門扉まで見送る理由。
先日の共闘任務から欠かさずこれをやるようになると、毎回そこまで大きな怪我もなく、無事に任務から帰って来れている。
だから私達の間では「縁起物」なのだろうと言う事で取り入れるようになった習慣だ。
おでこがゆっくりと離れる。
目を開ければ、いつも優しく私を見つめてくれる杏寿郎さんの顔。
「これ、どうぞ」
今日は早めに出ないといけないと言う話だったので、千寿郎くんと一緒におにぎりをいくつか握った。それを竹筒と一緒に彼に差し出す。
「おにぎりの中身は色々入れています。せめて食事中だけはほっとして欲しいなと思って……」
「気遣いありがとう、感謝する!」
「ではな!行って来る」
彼はそう言うと、表情を私の恋人から炎柱へ一瞬で変えて門扉を出た。
“今回も無事に戻って来ますように”
目を瞑って手を合わし、彼が行った方向に向かって祈る。1分ぐらい、そうした後は門扉を閉めて家の中に入った。