第31章 風を知り、岩を知り、そして全呼吸の理(ことわり)を知る
「………と言う事で、呼吸について大分深掘り出来ました。お2人の所に行けて良かったです」
「うむ!何よりだ!」
彼の文机に呼吸帳を開き、自分が書いた事を見てもらいながら私は杏寿郎さんに報告をした。
「水の呼吸が初級で、岩の呼吸が最上級…」
記録帳に書き込んでいく。
「そして、炎の呼吸と風の呼吸は共に中級、ですかね」
私はそう書き記すと、記録帳をパタンと閉じて筆を傍に置いた。
「はあ……疲れました…」
んーと伸びをして、右隣にいる杏寿郎さんにギュッと抱きつく。
「すみません、ちょっとだけこうさせて下さい……」
「ああ」
目を瞑って彼の胸に右耳をぴたりと当てた。規則的に聞こえる恋人の心音を聞くと本当に安心出来る。
杏寿郎さんが私の頭を撫でてくれれば、途端に瞼が重くなり……
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「あ、兄上。七瀬さんはこちらにいらっしゃいますか?夕食の準備を一緒に…と思って探しているんですが」
襖を開けた杏寿郎は、廊下の向こう側からやって来た千寿郎にああ、と頷いて右人差し指を自分の口に当てる。
「悲鳴嶼殿の所に行って、大分疲れが出てしまったようだ。すまんが後1時間だけ寝かせてやってくれ」