第31章 風を知り、岩を知り、そして全呼吸の理(ことわり)を知る
「岩の呼吸・壱ノ型」
「蛇紋岩・双極(じゃもんがん・そうきょく)」
悲鳴嶼さんの日輪刀は棘鉄球が鎖でつながれた手斧、と特殊なものだ。攻撃力や殺戮(さつりく)能力に長けているらしい。
私は岩柱邸の中庭で両手に筆と呼吸帳を持って、玄弥と一緒に彼の呼吸を見ながら息を呑んだ。
悲鳴嶼さんはあまり指導が得意ではないと昼食時に聞いたので、技を見せてもらう見取り稽古をお願いした。
岩の呼吸である壱ノ型……
手斧と鉄球の両方を錐揉み回転させつつ、同時に敵へ放つ技。
身長が2メートルを超し、とても大きい悲鳴嶼さんが放つ技はとにかく圧巻だった。
五大呼吸で1番難しそうなのは岩の呼吸かな……私はそれを早速呼吸帳に書き込んで行った。
「沢渡、これで良いだろうか?」
日輪刀を閉まった悲鳴嶼さんは”南無阿弥陀仏”の文字が散りばめられた羽織を纏いながら、私に聞いて来る。
「はい!とっても参考になりました。ありがとうございます!」
玄弥と一緒に悲鳴嶼さんに駆け寄る。玄弥も身長が180センチと高いけど、悲鳴嶼さんの近くにいると小人に見えてしまうのが不思議。
「お前、まだ時間あるか?カステラ食っていけよ」
「うん、ありがとう!頂くね」
再び3人で玄武の掛け軸が飾ってある客間に行き、美味しいカステラと美味しいお茶を頂いた。
その後は2人にお礼を言って再度山道を通り、煉獄邸に帰宅した。