第5章 水の呼吸に導かれて
もう動かない母と妹を埋葬するのは言葉に表せないくらい、悲しくて辛かったけど、彼は何も言わずに手伝ってくれた。
とてもわかりにくいけど、優しい人なのかもしれない。
風呂敷に入る限り、必要だと思うものを詰め込む。
大好きな星について書いてある本も忘れずに入れると、私は彼の後をついて行った。
もうこの家に戻る事はない。そう思うとぼろぼろ涙がこぼれた。
これが後に私の兄弟子となる、冨岡義勇さんとの出会いなのだけど、口数がとにかく少ないのは今も昔も相変わらず。
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その冨岡さんに連れて来られたのは狭霧山、と言うとてもとても空気が薄い場所。
ぜえぜえと息を切れ切れにしながら、なんとか私は彼に付いて行った。
一軒の小屋の前にいたのは天狗のお面をつけていて、水色の鱗雲の羽織を纏っている鱗滝左近次、と言う育手なるものをしてる人が私を待っていた。