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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第5章 水の呼吸に導かれて



「お前の肉親か」

私の頭上から静かだけど、真っ直ぐな声が降ってくる。
恐る恐る顔を上げれば、とても綺麗な顔立ちをした男の人がそこに立っていた。


肩より少し長い黒髪を無造作に一つに結び、向かって左側にえび色……と言うのかな。
右側には緑色や黄色で構成されている、毘沙門亀甲模様。

その2つの柄が半分ずつになっている羽織を纏っている。羽織の下は黒の詰襟に洋袴。町ではあまり見かけない服装だった。


「はい……」

そう力なく頷くと、私の家から飛び出した兄を追いかけて来たようで、自分が行った時には母も妹も息絶えていたと。そう教えてくれた。


彼は刀を一度振ってそこに付着した血を飛ばすとチン、と元の鞘に納める。何で廃刀令が出ている大正の時代に帯刀しているんだろう。そう考えていた矢先 ——

「……行くあては」と聞かれた。
私は首を横に振ると、力なく項垂れる。


その男の人は続けざまに「生き抜く覚悟があるなら付いてこい」
とだけ言うと、言葉足らずなのか、ほとんど詳しい事を説明してくれなかった。


『生き抜く?.....どう言う事なんだろう?』

そしてスタスタと足を進めて行こうとするので「あの!」と慌てて呼びとめた。

母と妹の埋葬をしたいと申し出ると、足を止めた後にゆっくり向きを変えて私の家に向かってくれた。






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※ えび色……
伊勢海老の殻のような深く渋い赤色

※ 毘沙門亀甲……
毘沙門天の甲冑などに使われることから名がついた、正六角形の辺の中点を重ねるように連続的に配置して、三又に見えるように内側の線を交互に取り除いた文様

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