第31章 風を知り、岩を知り、そして全呼吸の理(ことわり)を知る
それから一周間後。私は岩柱の悲鳴嶼さんのお屋敷に向かうべく、険しい山道を歩いていた。
「は〜!疲れたあ〜」
岩柱邸の門扉をくぐった途端、膝から崩れ落ちるように地面に座ってしまった。
屋敷の中庭からパタパタ……とこちらに向かって来る足音。
「あ……玄弥、無事に着いたよ。こないだはお手紙ありがとね」
「おぅ…お疲れ」
迎えてくれたのは、不死川さんの弟である玄弥。
お兄さん程ではないけど、顔に傷があって背も高いので、一瞬見ただけだとなかなか迫力がすごい。髪型も両方の側頭部が剃り上がっているので、これがまた威圧感を増す。
でも玄弥もお兄さんと同じで………
「カステラ用意しといた。後で食うか?」
「え、良いの??」
優しいんだよねぇ。本当に。
「私も2人の好きな物持って来たよ」
「ありがとな」
右手に持っていた玄弥の好物のスイカと、左手に持っていた悲鳴嶼さんが好きな炊き込みご飯の材料を彼に渡すと、一緒に屋敷の中に入る。
悲鳴嶼さんは滝行に今行っているそうで、昼食の準備を手伝いながら待とうと思う。
「あ、そうだ…こないだね、お兄さんの所行って来たよ」
「そっか……」
少し寂しそうな表情を見せる彼。