第31章 風を知り、岩を知り、そして全呼吸の理(ことわり)を知る
「そうだ、霞の呼吸って確か…」
「ん?どうした?」
私が杏寿郎さんを見上げると、興味深そうにこちらを見ている。
「今日、不死川さんから教えてもらったんです。風の呼吸の派生だって。伊之助の獣の呼吸も風の派生って聞いたから…対策が練れるかもしれません」
「なるほど…では受けるのか?」
今一度彼が私の意志を確認して来る。
「はい…挑んでみます」
そう私が言うと、大きな掌が頭の上に乗せられた。
「だから……無一郎くんとの勝負の日まで、不死川さんの所に月1じゃなくて週1で行っても良いですか?もちろん毎日の稽古も今まで以上に励みますから」
「承知した。では早速今から…」
ふふ、そう言うよね。
「地稽古!」 「地稽古を…」
「…………」
「そして善は急げ、ですよね?」
「よく俺の言おうとしてる事がわかったな」
目を丸くした彼だけど、とても嬉しそうにしている。
「あなたの継子ですから」
彼にそっと触れるだけの口付けをして、またぎゅっと抱きついた。
そうして———
何回か断っていた無一郎くんとの勝負を受ける事に決めた私は、早速彼に了承の手紙を出した。
「楽しみにしてるね。もちろん手加減なんてしないから」
……と返事が届いて、やっぱり後悔がなかったと言えば嘘になるけど……
それよりも挑戦出来る嬉しさが、ほんの少しだけうわまっていた。
よし!頑張ろう…。