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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第5章 水の呼吸に導かれて







2年前に父が亡くなった。
私は15歳だった。家族は5人。1つ上に兄が、3つ下に妹がいた。

家は本屋を営んでいて、家にはたくさんの書物があった。大好きな父や母にたくさん褒めてもらいたくて、兄と競うように色々な本を読み漁った。

でも。
父が病気で亡くなってから母は変わった。

兄を立派な後継ぎにしないと……と言う思いが根底にあったのは、理解できる。

母は私や妹に向けていた愛情を全て兄に注ぐようになり、私はそれがたまらなく寂しかった。

そんな時だった。
町に出かけていて帰りが遅くなった所に鬼に出くわした。

まさか、鬼と言う生き物が存在していると思わなかった私は腰を抜かしてしまい、その場から立てなくなった。

しかも、あろう事かその鬼は兄だった。
何故?兄がこんな事に?


兄は目の前の私の事が全くわからないようだった。
口から血に濡れた牙をチラつかせ、縦に瞳孔が割れた目をこちらに向けている。


狙った獲物は逃がさない。そんな眼差しだった。


ああ。自分はもうここで死ぬんだな。
そう直感的に思っていると ——

「水の呼吸 壱ノ型」
「水面斬り」

私の後ろから2色に分かれた羽織姿の人物がスッと出てくる。
そして兄の頸をザクッ…と横に断ち斬った。
その手には刀を持っていた。


ゴロッと地面に落ちた頸は灰になり始め、胴体と一緒にサラサラ……と砂が舞うようになくなった。

最初から私に兄はいなかった。
そう言われているみたいに跡形もなく消え去った。


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