第31章 風を知り、岩を知り、そして全呼吸の理(ことわり)を知る
「おう、待たせたなァ」
その声と一緒に襖が開かれた。思わず、体が一瞬ビクッとなる。
………来た。泣く子も黙る風柱…………私の心臓の鼓動が速くなった。
「不死川さん、こんにちは。今日はお時間取って下さり、ありがとうございます」
10分後……
私と不死川さんの目の前には2つのおはぎと長友さんが淹れてくれたお茶がある。
「…………で?話って何だァ。ああ、風の呼吸について知りたいとか言ってたなァ」
彼はお茶を一口啜ると、おはぎを食べ始めた。
「おい、食わねぇのかァ」
「あ、頂きます……」
「そうかい」
両手を合わせて、私もまずお茶を飲む。それからおはぎを楊枝で小さく切って口に含んだ。
「…うめェ…」 「美味しい…」
私と不死川さんの声が重なる。
あ、確かに頬が落ちそうな表情してる……かわいいかも…
ふふ、とつい笑って…うわっ!まずい!やっちゃった…。
ギュッと目を瞑って覚悟したけど、特に何も起こらず。
あれ?絶対睨まれた後、悪態つかれるかと思ったのに、どうした?風柱…と先程呟いた事と全く同じ事を心の中で考えていると……。
「うめェよなァ、ここのおはぎ」
え………
恐る恐る目を開けて彼を見ると、不死川さんの顔はゆでだこのように真っ赤だった。