第28章 神器と共に炎の神楽を舞い踊れ ✴︎✴︎ +
「全く……お前は俺と同じ炎属性だろうが! 簡単にやられんなよ……」
「ぐっ、申し訳、ありませ……ん」
焔の腹の傷は三分のニ程再生しているが、いまだに熱を持っており、焼けつくような痛みが変わらずにあった。
「ふーん、炎柱の呼吸はやっぱ強力なんだな」
「うっ……」
夕葉は自身の爪で部下の腹の肉を抉り取ると、目の前に掲げてまじまじと見つめる。黒く焦げたままの肉片をまず鼻に近づけ、においを確認するとゆっくりと口腔内に入れた。
「ちょうど良い具合に焼けてんな。美味いぞ」
牙で切り裂いた肉を舌の上に乗せ、蛇鬼の味をじっくりと堪能する夕葉である。
「ごちそうさん、蛟の目玉よりは美味かった」
「あり、はあ……がとう、ございます……!」
ふう……と脂汗と共に言葉を発した焔は、杏寿郎から受けた傷を全て再生させたのち、主の夕葉に傅(かしず)いた。
「水も炎も俺の盾になりゃしない。後は風と地のあいつらか…」
彼がちらりと炭治郎達がいる場所へ視線を移す左横で、焔は悔しさでいっぱいになる。もっと夕葉の役に立ちたいのに。
こんな傷を受けておめおめと帰還する事になった。
それから自分は主の盾にもならないと言う言葉。
これに大層落ち込んでしまう。先程まで対峙していた同じ炎を使用する鬼狩りの顔が脳裏にふっと浮かんだ焔は、それを無理やり打ち消した。
『はあ、くっそ! ようやく完治したぜ』
焔の腹部の傷は綺麗に消え去った。しかし、心にはなかなか消えない傷痕が刻まれていた。