第28章 神器と共に炎の神楽を舞い踊れ ✴︎✴︎ +
杏寿郎さんが私に少しずつ近づいて来る。
心臓…落ち着いて。右の掌をその胸の真ん中に当てながら、いつもと同じ事を心の中で思う。
「では望みとあらば…」
彼が私の両頬を大きな手でふわっと包んでくれると、コツン…と私のおでこに、自分のおでこを当ててくれた。
杏寿郎さんの体温がじわっ…と染み込む。
体温だけじゃなくて、彼の強さも分けて貰えれば良いのにな。
目を瞑って彼がくれる温もりを堪能していると、スッ……とおでこが離れる。
ゆっくり目を開けると、とびきり優しく、愛おしい目で私を見る杏寿郎さんの表情がそこにあった。
「実はな」
「どうしました?」
何だろう…………?
「俺にとっても、君とのこれは験担ぎだ」
「……光栄です!」
私の頭にポン、と掌が乗ったかと思うと優しく撫でてくれる。
これも元気出る……!
「少年達が待っている。行こう」
掌を離して、そう私に言った彼はもう炎柱の顔になっていた。
はい、と返事をして私達は赤坂氷川神社に向かったのだった。
そこに待っていたものは………