第28章 神器と共に炎の神楽を舞い踊れ ✴︎✴︎ +
そして、金曜日の夜。19時30分…煉獄邸の仏間。
『必ず戻ってきます、行って来ます』
私は瑠火さんに今朝の報告をした後、いつもの挨拶をして立ち上がると、自分の部屋に日輪刀を取りに戻った。
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玄関では隊服姿の杏寿郎さんが草履を履いて、私を待っていた。
炎柱の羽織がいつも以上に逞しく見える。
私も草履を履いて立ち上がると、群青色の鞘をベルトの左側にさしこんだ。
八雲の羽織を胸の前でギュッ……と掴む。これは私にとっての験担ぎのようなもの。
千寿郎くんが私達に切り火を切ってくれる。
「兄上、七瀬さん……お気をつけて」
「……武運を願っている」
私と杏寿郎さんは千寿郎くん、そして槇寿郎さんにお礼を伝えると、玄関の扉を開いて外に出た。
………どうしようかな。言ってみようかなあ。
門扉までの途中、もじもじとしながら歩いていたけど、意を決して少し先に見える大きな背中に声をかける。
すると、彼が振り向く。
「どうした?七瀬」
優しい表情で私を見てくれる恋人。
私はおでこにかかる前髪を左手で少しかき分け、右手の人差し指でトントン、とおでこを指す。
「杏寿郎さん、験担ぎお願いします」