第27章 岩戸から出てくる日輪 +
「………眠れないのだろう?」
彼はいつも通り、フッと笑って私の頭に手を乗せる。
「はい……気持ちが高まってしまって」
よしよしと撫でてくれた後はふわっとその腕の中に抱きしめてくれる。そして、頭上から優しい声で私に問いかけた。
「俺の部屋に来るか?」
………こくん、と首を縦に振る。
杏寿郎さんは私の手を自分の手に絡めてくれて、部屋へと連れて行ってくれた。
「君には本当に驚かされてばかりだ」
彼が改めて感心してくれる。布団の中に2人で入り、向き合っている状態だ。
「ありがとうございます。槇寿郎さんの所に毎日のように通った甲斐がありましたよ」
「父上がまた千寿郎に稽古をつける日々が来ようとは……まだ信じられないぞ。君は新しい風をどれだけ煉獄家に吹かせてくれるのか…これからも楽しみだな!」
あ、嬉しそうな顔。そうだよね……。
「ふふっ、新しい風ですか。良い表現ですね」
「そうか?」
「はい!……あ、それで杏寿郎さん。さっき言えなかった事があるんです」
“何だ? “
疑問符を顔に浮かべて、私を見ている彼。うーん。これを言うのは勇気がいるけど……。正直に槇寿郎さんにしてしまった事を話していく。
「はは! あの父を平手打ちしたか!君は本当に面白いな」
あ、あれ? 笑ってくれた??
意外な反応に驚いたけど、それが返って事の重大さを物語っているようで、大きなため息が口からついて出てしまう。
「? 何故ため息をつくのだ?」
「いえ、やっぱりやりすぎたんだなあって……今更言っても仕方ないのですが、落ち込んでいます。槇寿郎さんも最初どんな立場でこんな事をするんだ……って激昂しましたもん。でも私は杏寿郎さんを罵倒された事が、どうしても許せなかったんです」