第27章 岩戸から出てくる日輪 +
——— パァン !!
気づいたら、私は彼の頬を平手打ちしていた。しまった、流石にこれはやりすぎた…。その証拠に彼の顔が更に不機嫌になったからだ。
「おい!! お前はどんな立場かわかってこんな事を……」
「私の事は!! 罵倒されようが、何を思われようが…構いません。でも師範を……そんな風に言うのだけはやめて下さい」
私の両の目尻からは涙がはらり、はらりと一粒ずつ流れた。
「出過ぎた事をしてしまって……ひっく、申し訳ありません」
ズズズと鼻を啜り、こぼれた涙を手の甲で拭いながらも言葉を止める事をやめない。言わなきゃ。逃げたらダメ。
これだけは伝えなきゃ。
「師範は…今槇寿郎様が話して下さった事は全く知りません。炎柱の書は読まないのか、と以前聞いた事があります。その時言ってました。読んでないし、今後も読むつもりはないと。だから痣の事なんて師範は知らなくて良いと……私は思います」
「何故そのように思う……杏寿郎も炎の呼吸を継承した剣士だろう」
槇寿郎様の左頬はまだ赤い。でめ先程より口調が落ち着いている。
気のせい、じゃないよね?
「師範は二十歳とお若いですが、判断力と洞察力に凄く秀でています。柱だから当たり前だ、と言われてしまえばぐうの音が出ないんですけど。一般隊士の私がどうあがいても追いつけない力を……私が欲している物をたくさん持っているんです」
杏寿郎さんが羨ましい。
どんなに努力しても追いつけない。型の応用技を編み出しても、それ以上の地力が彼にはあり、超える事が出来ない。
「痣が出なくても、痣に頼らなくても。きっと師範は十二分に戦える剣士です。それぐらい強いと思います」