第27章 岩戸から出てくる日輪 +
—— 2日前の火曜日。
「おはようございます。槇寿郎様。沢渡です。朝食お持ちしました」
この日もいつも通り、槇寿郎さんへの朝食を持ってやって来ていた。
『ああ……だが、出るのは砧村ではない。赤坂の氷川神社だ』
頭の中に杏寿郎さんが昨日の朝、言っていた事が思い浮かぶ。
八岐大蛇を彷彿とさせる鬼に有効な手段。神話の中ではお酒を使って、大蛇を倒した。
今回の鬼に対して神話と同じ対応が出来るとは限らないけど、それでも試す価値は充分にあると思う。
私は襖の向こうにある槇寿郎さんに話しかけた。
「今日は月曜日です。今週も始まりましたね。あの、申し訳ありません……ご相談があるんですけど宜しいですか?」
今回の任務の内容と、持っているお酒で1番度数が強いものを頂けないか。そういう事を話した。
「……と言う事で必要なんです。だからお願いです!!」
私は襖に向かって深く深く頭を下げる。けれど、襖の先から返事はない。
ダメか……あまり遅いと杏寿郎さんと千寿郎くんが心配するしなあ。この日はこのまま引き上げる事にした。
しばらく廊下を進んだ所で、後ろから襖が開いた音がしたけど、すぐに閉まる。
……また明日かな。