第3章 起きて進め
「ごめん。これから任務だから俺そろそろ行くね」
流してた涙をグイッと腕で拭うと、善逸はスッと立ち上がった。その目は私と同じように充血している。
「来てくれてありがとう。嬉しかったよ!あ...そういえばどうして今日は1人で来たの?」
善逸がやって来た時から疑問に感じていた事を聞いてみる。
すると……。
「炭治郎がさ」
「うん」
「巧さんの事をよく知ってるのは俺だし、あまり大勢で行くのは七瀬ちゃんが気疲れするんじゃないかって.....」
さすが!炭治郎だな…。
「そっか。やっぱりそのへん長男だよね」
改めて「さすがだねぇ」と今度は言葉に出した。
「ねえ、じゃあ俺は?」
善逸が自分を指差して聞いてくる。うーん、そうだなあ……。
しばし私は思案する。そして ———
「善逸は次男じゃない?三男は伊之助で、禰󠄀豆子は末っ子かなあ」
「合ってるかも」
少し苦笑いをしつつ、頷く後輩だ。
「七瀬ちゃんは……」
「お母さんじゃなくて、お姉さんね」
言われるであろう事を予想して、すかさず善逸につっこむ。
「もうー……はい、ねーちゃん」
「よろしい」
私は腕組みをしてうんうんと頷いた。やっぱりか……。先回りして止めて良かった。
「禰󠄀豆子ちゃんも七瀬ちゃんいなくて寂しそうだよ。帰ってくるの、みんなで待ってるね」
善逸はニコッと笑顔で私にそう言った後、扉に向かう。
そして「じゃあね」とこちらに手を振り、部屋を出て行った。
トン、と静かに引き戸が閉まる。
今度こそ1人になった。