第24章 霞む記憶が晴れた先に +
「時透は君の事を好いている気がする」
ええ?まさかそんな……
「杏寿郎さん、それはないと思います」
「何故そう思う?」
彼の掌が私の後頭部に回され、髪をとき始めた。
「手合わせしない?って言われたんです。違うんじゃないでしょうか?」
「む……手合わせか?」
はい、と頷いて更に彼をギュッと抱きしめた。
「好意がある場合、どこかに行こうとか……そう言う事を言ってくるんじゃないかと。杏寿郎さんは以前、私に落語に誘われたと思ったでしょう?」
「なるほど!確かにそうだな。あの時は気づかなかったが、俺は君と出かけたかったのだな」
「落語は怖かったけど、杏寿郎さんと初めて出かけれて凄く嬉しかったなあ」
すると、彼が私の頭を撫でてくれる。私、杏寿郎さんに撫でてもらうのも好きだなあ。
「もし万が一、杏寿郎さんが言うような事があったとしてもですよ」
「ああ」
一つ大きく息をはいて私は恋人にこう言った。
「私が好きなのはあなたです。あなた以外の人とお付き合いする気はありません」
「そうか! ありがとう…」
こんなに私の事を好きでいて、大事にしてくれる人。そして以前の恋人である、巧の事も大事にしてくれる人。
もう杏寿郎さん以外の人は考えられない。
「俺は果報者だな」
「ん………」
恋人が優しい口付けをくれた。