第24章 霞む記憶が晴れた先に +
私は杏寿郎さんの手を掴んだまま、廊下を進んでいく。
さっき氷嚢を当てていた部屋の襖の前に立つと、外から声をかけて誰もいない事を確認する。
そして2人で中に入った。
襖を閉めると、恋人を前からギュッと抱きしめる。
「私の恋人は杏寿郎さんですよ」
「……」
彼の両腕が私の背中にゆっくりと回される。
「話の流れで、急に仲良くなったように見えたかもしれませんけど!……こうやって抱きしめたいと思うのはあなただけです」
私は背伸びをして、杏寿郎さんの唇に口付けを贈った。
顔を離すと、眉が垂れ下がった彼がいる。
「恋をすると、男はダメだな。少し弱くなる気がする」
「そうですか?……えー、杏寿郎さんが?」
「ああ、情けない程にな。君は強くなった気がするが」
「あ、それは当たりです」
だって ——
「自分の好きな人が自分の事を好きでいてくれるだけでも嬉しいのに、杏寿郎さんは私以上に私の事をよくわかってくれていますから」
「そうだな」
再度、彼の事をぎゅうっ……と抱きしめ直した。大好き、本当に。