第24章 霞む記憶が晴れた先に +
「さつまいも、食べちゃいますね」
目の前の甘露煮を口に含む。
「ん…美味しい!!」
「杏寿郎さん!甘露煮って蜜璃さんが継子をされてた時に、よく一緒に食べたんですよね?」
「ああ。そうだな」
どうしよう。本当に心配になって来た。改めて彼の顔をじいっと見てみるけど、顔色は悪くない。
うーん。困ったなあ、どうすれば良いんだろう?と悩んでた先に………
「七瀬、さっきの話考えておいてよ」
無一郎くんが私達のすぐ後ろを通って襖に手をかけた。
「ねえ、それは無理だから」
「楽しみにしてるね」
そう言った後、スッと襖を開けて霞柱は廊下に出て行った。
絶対嫌なんだけど。
はあ……と1つため息を落とした所に、隣の杏寿郎さんが私の右手をギュッと握って来た。
「随分仲が良いのだな」
ん?彼の声色に少しだけ鋭さのようなものを感じる。あ、そう言うことか……なるほどね。
ピン!と来た私は、甘露煮を食べる手を止めて彼に向き合う。
「杏寿郎さん、ちょっとお散歩に行きませんか?」
「散歩か?」
「はい」
彼に立ってもらった後、襖を開けて一緒に廊下に出る。しばらく歩いていたけど、無一郎くんに会う事はなかった。