第24章 霞む記憶が晴れた先に +
「いや、ダメじゃないけど」
「僕も無一郎で良いから」
「じゃあ、無一郎くん」
「悪くないね。君にそう言われるの」
うーん。やっぱりこれじゃあどっちが年上かわからない。何か私、翻弄されてるもん。
でも —— 最初に会った時、彼は私の事なんて眼中になかった。
だって鳥に負けたぐらいだもの。それがこうして会話出来るようになってるなんて。本当不思議。
「それでさ。君にお願いしたい事があるんだけど」
無一郎くんは私をまっすぐ見据えると、急に真剣な顔になる。
「何?」
「うん……」
★
「すみません、戻りました」
私は杏寿郎さんの所に戻った。
「あ、さつまいもの甘露煮!頂いて良いですか?」
彼が食べていたので、自分の取り皿に取ろうと声をかけたのだけど……
「………」
ん?どうしたんだろう?
「杏寿郎さん!」
「ああ、すまない」
トントンと肩を優しく叩くと、顔をこちらに向けてくれた。珍しい。ぼうっとしてるなんて。
「どうしたんですか?」
「時透と何を話していたんだ?」
「え?名前を教えて、それと」
「そうか」
私が言い終わる前に、話を切り上げられてしまった。
せっかちな彼は結構こういう事あるけれど、少し様子が違う気がする。どうしてだろう。