第24章 霞む記憶が晴れた先に +
「あ、私は……」
「煉獄さんの継子でしょ、確か……」
えっ、どうして覚えているんだろう。
私は戸惑った。時透さんは記憶が混濁している事が多いと聞いていたから。
「何で覚えてるの?って顔だね」
「はい……」
彼は私の目をじっと見て来る。色味は違うけど、杏寿郎さんと同じように吸い込まれそうな双眸だった。
「刀鍛冶の里での任務以降、覚えている事も増えて来てさ。それでも全部が全部じゃないんだけど」
「ええ、少し話は聞いています」
確か双子のお兄さんがいたんだよね。鬼に殺されたんだっけ。
私は自分の兄の事を思い出す。
少し状況は違うけど、鬼によっていなくなってしまった、と言うのは私と一緒。
「ねえ、ちょっと。僕の話聞いてる?」
兄の事を思い出していたら、彼の言葉を捉える事が出来ていなかったらしい。
目の前には眉をひそめ、やや不機嫌な表情をした時透さんがいる。
顔が綺麗な人は笑ってなくても、見惚れてしまうんだなあとそんな事を思った。