第23章 音鳴る屋敷で蟲と戯れる +
「宇髄!」
「ああ?何だよ」
「後どれくらい時間がある?」
杏寿郎さんは宇髄さんに休憩の残りを確認した。
「後1分もねーぞ、行くならさっさと行って来やがれ!」
「承知した!」
宇髄さんが何かを察したらしく、しっしっと私達に向かって手をひらひらさせる。それも恐ろしく、ニヤニヤした顔で。
え、何だろう?気味が悪いなあ、
杏寿郎さんは「さ、行くぞ」と言って私の手を掴んだ、かと思うと道場から一旦退出する、
彼は誰にも見えない場所まで連れて来ると、私の両頬を柔らかく包んだ。胸がドキン、と跳ね上がる。
「え?あの、杏寿ろ…」
「静かに」
恋人は私にそう言った後、コツンと自分のおでこを私のおでこに当てて来た。
ふふっと思わず笑顔が出る。
「俺からの験担ぎだ」
「これ、すごく好きなんです。杏寿郎さんの力を分けてもらえるような気がして」
「そうか?」
「はい!」
私は元気よく返事をした。
「詰将棋、初めて冨岡に勝ったそうだな」
「あ、はい。聞かれたんですね」
「ひょっとしたらひょっとするかもな?」
「どうでしょう?相手はしのぶさんですからねー」