第23章 音鳴る屋敷で蟲と戯れる +
私が手拭いで顔の汗を拭いていると、杏寿郎さんが側にやって来た。
「最初からあれが出来れば、君は言う事がないのだが」
「はい、自分でもよくわかってます」
長年染み付いた癖、と言うのはなかなか消え去ってくれない。
「さて、最後の3本目だな」
「はい……」
私は竹筒に入っている水をゴク、ゴク、と飲み込みんだ後、ふう…と息をついた。
「七瀬」
「はい」
杏寿郎さんはニコッと笑って私の肩に両手をポン、と乗せる。
「肩の力をもう少し抜け」
そして私の肩を2、3回揉んでくれる。
「ん、はい」
「うむ、こんな所か」
彼は両手で私の肩をポン、と優しく叩く。
「ありがとうございます。凝り固まってたので、大分軽くなりました」
「……」
「杏寿郎さん?どうしたんですか?」
「いや…」
うん?この顔は何か言いたそうな感じだなあ。