第21章 上弦の月と下弦の月 ✴︎ 〜 茜色の恋、満開 +
「恋人を甘やかすのは当然だと思うぞ」
私の頭をまた撫でてくれる彼。
幸せだなあとしみじみしていた矢先に ——
ぐ〜〜〜………と、杏寿郎さんのお腹の虫も鳴った。
「ふふっ」
「仕方ないだろう。鳴ってしまったものは」
顔の赤い彼を見ると、可愛いなあと思ってしまった。
「む?その顔は……」
あ、まずい、まずい。
「杏寿郎さん!お腹がすきすぎて、背中とくっつきそうです」
私はすぐに誤魔化した。
「まあよしとしよう。では少し遅くなったが昼食に行くか!」
「はーい」
彼が自分の左手を私に差し出す。
手を繋ぐとすぐに指を絡めてくれる彼。私は優しい気持ちで胸がいっぱいになった。
『今日は何を食べに行くのかな?』
恋人の横顔を上目遣いで見上げながら、昼食に思いを馳せた。
この日の昼食は喫茶店に行って、洋食のオムレツライスを初めて食べた。
杏寿郎さんはハヤシライスを「うまい!!!」と言いながら10食程、食べていた。
蜜璃さんもだけど、どこにこれだけの量が入るのだろう。凄いとしか言いようがない。
次、一緒に出かけれるのはいつかな?また行きたい所考えておかなきゃ。
活動写真も行きたいし、杏寿郎さんが好きな相撲、歌舞伎、能も行きたいなあ。
そんな事を浮かべながら、2人で家路に向かった。