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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第21章 上弦の月と下弦の月 ✴︎ 〜 茜色の恋、満開 +





















「いやあ、無惨様凄かったね。ご乱心ってこの事を言うんだろうなあ」

「………」

「あれぇ、夕葉どうしたの?機嫌でも悪いのかい」

「いえ、別に」

ここは無限城。あちらこちらに浮遊した異空間漂う場所は鬼舞辻無惨の本拠地である。童磨と夕葉は無惨によって呼び出された。
そのわけとは ——



「貴様達の行動は私に筒抜けと言う事を忘れていたのか。童磨、誰の許可なく勝手に行動している?お前は私によって生かされている存在なのだぞ」






「俺も色んな所を抉られたり、潰されたりしたけどさ。夕葉の方が酷かったよね」

「……そうですね」

童磨並びに夕葉は怒り心頭の無惨により、至る所を切り刻まれ、潰された。目・口・鼻・耳・腕・腹・足、と言った部分である。


「でも君と契約したお陰で、俺自身の血肉も無惨様好みになったから、その点は良かったなあと思っているよ。前にお前の目玉なんぞいらんって言われてさあ、結構落ち込んだんだよ」

『なるほど。俺と契約したのはこれが目的か』

互いの衣服は元の色がわからないくらいに血まみれに。
二人の周囲には無惨によってもがれた己の体の一部が、取り囲むようにそれぞれ置いてある。

「さて、じゃあ片付けしよっか。夕葉ここ食べてよ。君好きでしょ」

「ありがとうございます」

童磨は無惨に引きちぎられた、己の右手を夕葉に差し出した。
彼は上弦の鬼の人差し指と中指を、静かに口腔内に入れるとゆっくりと喰い始める。牙で噛み砕く度に舌へ広がるのは甘い甘い鉄の味だ。

「わあ、今日も君の目玉は極上だね。無惨様が残して下さってて、感謝だよ」

美味いなあ、美味いなあ、と果物を味わうように童磨は夕葉の双眸を喰い始めた。




こうして上弦の鬼は己の狙い通りに、無惨の気に入りへと立ち位置を変えた。



『利用出来る物は何でも利用する、ほんっと腹の底が見えない鬼だな』


ガリ…と夕葉が最後に食したのは、童磨の虹色の眼球だ。
背中合わせで互いの肉を喰う二人の少し上の空間で、鳴女が爪弾く琵琶の調べが厳かに鳴り響いたのであった。

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