第3章 起きて進め
それはそうだ。10分続けて泣いただけでもまぶたが痛くなった事があるんだもん。30分なんて……
これは確認しないと。
私は両目の涙を両手でしっかりと拭う。
するとその様子を見ていた炎柱様が「もう大丈夫か?」と聞いて来たので「はい」と答えながら、首を縦にふった。
私の頭に乗せてあった掌がゆっくり離れて行く。その場所にはまだ彼のあたたかな温度が残っていた。それにほんの少しの寂しさを感じてしまう。
「あの……そこの棚に手鏡って入ってないですか?あったら渡して欲しいのですが」
「ふむ。探してみよう」
炎柱様が寝台の隣に置いてある棚を上から一段ずつ開けてくれるのを横目で確認する。
どうやら目的のものが見つかったようで「あったぞ」と言ってこちらに渡してくれた。
「ありがとうございます」
私はお礼を言って、恐る恐る鏡を覗きこむ。
「はあ………予想以上にひどい………」
目の前の鏡の中には赤く充血した白目。
その上にあるまぶたも赤くなっており、いつもより半分程の目の大きさになっていた。そして、鼻も真っ赤。
「お岩さんの瞼は免れたから良かったけど」
私がため息をつきながらそう発すると、炎柱様が「お岩さん?」と不思議そうに呟いた。