第21章 上弦の月と下弦の月 ✴︎ 〜 茜色の恋、満開 +
「ゴーン……」
大きな鐘が鳴り響くこの場所は街中にあるお寺。
今日の目的の場所がここだ。私の手にはあのおどろおどろしいお岩さんの絵が書かれているチラシ。
落語を観にきた。寄席ではなく、お寺に噺家さんを招いての落語。
怪談は苦手、と散々恋人に伝えたのだけども「一緒に行くぞ」の一点張りで、ここまでやって来た。
四谷怪談は真打ちの噺家さんが担当するらしい。
真打ち —— 師範に値する位置の方達だ。と、言う事は技量が一級品のはず。
「怖そうだなあ」
本堂の畳に座って持っているチラシに視線を向けて私は顔を引き攣らせていた。
ポン、と私の頭に大きな掌がのせられる。
「そんなに怖いか?」