第21章 上弦の月と下弦の月 ✴︎ 〜 茜色の恋、満開 +
杏寿郎さんが含み笑いをしながら私に言ってくる。
「鬼殺は出来て、怪談が苦手と言うのもおかしな話だが?」
「別物ですから。元々怖いものは苦手なんですよ」
私は恋人の顔を軽めに睨む。
「そうか」と彼は少し笑って、私の頭から掌を下ろした。周りの人の声が少しずつ静かになっていく。
前座と呼ばれる噺家さんが登場する。それから座布団に座り、演目を始めた。
お題は「まんじゅうこわい」
古典落語の1つで、「寿限無」「目黒のさんま」と一緒に広く知られた話。
前座の方が終わると、次に二ツ目と呼ばれる噺家さんが登場。
お題は「火焔太鼓」これも古典落語の一種。
そして最後に、真打ちの噺家さんが登場。
お題は「四谷怪談」これは創作落語に当たるらしい。