第21章 上弦の月と下弦の月 ✴︎ 〜 茜色の恋、満開 +
そんな事を思いながら、ちらっと彼に視線を向ければ「どうした?」と優しい笑顔を見せてくれた。
「よくお似合いなので、見惚れていました」
私は素直な意見を伝えた。この素直に思いを伝えると言う事が巧にはあまり出来なかった。これは巧があんな事になり、1番後悔した事。
まだ恋仲になったばかりだけど、目の前の恋人に対して思った事は意地を張らずにきちんと言う。
「ありがとう。君に言われると嬉しさが増すな。そういう七瀬もよく似合っているぞ」
「ありがとうございます」
お礼を伝えた私の左手に自分の右手を絡めると「ここもかわいいな」と私の爪を見て言った。
嬉しい。こんな所まで褒めてくれるなんて。
「杏寿郎さんの髪や瞳の色と同じにしてみたんです……とは言っても、2色とも代替えですけどね」
「ん?どういう事だ?」
繋いだ手を自分の顔に近づけて私の爪を色々な角度から見ている。
「真っ赤は大人の女性と言う感じで気が引けちゃいましたし、金色は見つからなかったので、黄色にしたんですよ」
「なるほど」
彼はそう言って一回頷くと、手を降ろした。