第21章 上弦の月と下弦の月 ✴︎ 〜 茜色の恋、満開 +
あ、また女の人が振り向いた。
私は湯浴みを済ませた後、橙色の着物に着替えて町にやって来ている。めったにしない化粧もほんの少しして、爪紅は左右の親指、中指、小指に浅緋色(あさあけいろ)を。
同じく左右の人差し指、薬指には黄色の2色を塗った。
口にさしている紅は着物の色に合わせて、淡い橙色がかかった桃色に。確か曙色と呼ばれる色だったような気がする。
何故こんな格好をしているかと言うと ——
「うむ!今日も賑わっているな!」
私の隣に大好きな恋人がいるから。ある目的の為に一緒に町にやって来た。
今日の杏寿郎さんは濃紺の着流しに同じ色の羽織。そして長い髪を頭の上で全て1つに結んでいる。
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※ 浅緋色(あさあけいろ)…
茜で薄く染めた緋色、少し黄みがかっている赤色
※ 曙色(あけぼのいろ)……
曙の空を思わせる、朝焼けのような淡い黄赤色