第3章 起きて進め
勘弁してよ。即座にそう思った。
「ほらー早く来いよ!七瀬ー!!」
私の名前を呼んで振り向いた巧の笑顔がとにかくきらきらしている物だから思わず笑顔になる。
それからさっき受け取った木刀をグッと握り、彼の後を追いかけた。
——ずっと、ずっと。
そんな日々が続くと思っていたのに ————
鬼殺は残酷だ。いつだって。
★
私はさっきアオイちゃんと話してた時と同じように、天井をみつめていた。
溢れようとする涙を堪えている為だ。
「俺が駆けつけた時には本当に虫の息と言った状態だった。しかしそれでも息を引き取るその時まで、君の事ばかり案じていたぞ」
「そう言う人なんです。いつも人の事ばっかり気にしてくれて……」
ああ、ダメだ!もう我慢できない、どうしよう。
そう思っていた時 ——
「考えても仕方のない事は考えるな」
炎柱様がはっきりと。そして凛とした口調で私に言って来た。
「……と言うのが俺の信条ではあるんだが。恋は簡単に割り切れるものではないのだろうな」
「そうですか?」
「ああ」と炎柱様がしっかりと頷く。
「君を見てるとそう思う」
そう言うと私の頭にぽん……と大きな手を乗せてくれた。
彼の掌からとても温かいものを感じる。私を見つめる日輪の双眸からもあたたかい気持ちのような物が伝わって来た。
どうしよう。
もう涙と鼻水がいよいよ溢れ出そうになって来た。
「大事な人を亡くしたんだ。泣きたい時は思い切り泣いても良いんじゃないか」