第3章 起きて進め
「たまたまって言うのもあるかもだけどな!」
へへっと笑って巧は私の膝に自分の頭を乗せたかと思うと、右手で私の左頬を包むように触れる。
「七瀬…お前さ、剣士やめんなよ」
「ええっ?何それ……」
私は左頬に触れている巧の手に自分の左手を重ねて、目を丸くしながら聞き返す。
「今のままじゃもったいないって事。七瀬は力はすごく強いってわけじゃないけど太刀筋は綺麗だし、予測も上手い」
「ありがとう」
「だけど自信がなあ……」
「さすが、よくわかってるね」
私は苦笑いをした。
巧の言う通り、前線に出るのは少し苦手だ。後方支援なら大丈夫なんだけど。
だって、単独任務も両手で数えれるぐらいしかやった事ないもん。本当に自分でもよく生きのびてるなあと思う。
………運もあるのかな。
「ま、これは他人がどうこう言う事じゃなくて、自分で乗り越えていかないとだけど」
「うん」
「でもお前、ここ1番って時は結構強いじゃん?この先、自分だけの型とか見つけたりしてな?」
「いや、それはどうかな」
「わかんねーぞ!」
恋人はにやっと笑ったかと思うと、よっと起き上がる。そして、自分の横に置いてあった2本の木刀を私に1本ほいっと渡して来る。
「ほら、さっきの続き!鬼殺は待ってくれないしな。行くぞー」
「ええ?またあ?」