第20章 ほどけない夜が明けた後は ✳︎✳︎
俺の睫毛に小さな手がそうっと触れる。
「ん……」
気持ち良いがくすぐったい。つい声が出てしまった。
少しの”間”が出来る。どれ、このあたりで目を開けてみるとするか。
「”かわいい”は男に言う言葉ではないな」
「んぅ……」
七瀬の可愛い唇を、俺は自分のそれで包むように当てた。そして舌を差し入れ、朝にしてはやや深めで濃厚な口付けを贈る。
お互いの息が混ざり合い、艶やかな水音も心地よく耳に響く。
『やはり何度も口づけたくなる唇だ……』
しばらく口内を舌で辿る。彼女が気持ち良さそうな事を確認すると、唇をゆっくりと離していった。その際、2つの唇を繋いだ銀色の糸がきらりと光る。
「おはようございます……」
少しだけ俺を睨むようにして、挨拶をして来る七瀬。
「おはよう」
「……いつから目を覚ましていたんですか」
「君が目を覚ます少し前から」
俺がそう言うと、ますますこちらを睨んでくる。
申し訳ないが、睨んでも全く怖くない。むしろ君の可愛さが増すだけだぞ。