第20章 ほどけない夜が明けた後は ✳︎✳︎
包まれた両頬からじわっと伝わって来る杏寿郎さんの掌。その温度が、また心地よい。
「今の七瀬は俺の恋人だ。愛しい君が他の者と生活を共にする。そう思うと、あまり気分が良いものではないな」
私の顎を掴んだ杏寿郎さんが唇を一度ちう……と吸い上げて、また啄む口付けをくれた。
嫉妬 —— と捉えて良いのかな。
どうしよう、少し嬉しいかも。ほんのりと私の心が温かくなっていく。
「あ……杏寿郎さん、そろそろ起きませんか?」
薄暗い外の様子がいつの間にか明るく色づいている。稽古もやらないといけないしなあ。でも、まずは湯浴みしたいな。
「そうだな。湯浴みするか」
「え?」
ちょうど頭の中で考えていた事を言われるものだから、びっくりした。