第19章 獅子なる星が降る夜に ✳︎✳︎ +
「そうか」
杏寿郎さんはそう呟いた後、私の背中に唇をそっとあてた。
「やっ、それはダメです…」
彼は背面の右上から辿るように、口づけを落として行く。左下まで届くと、最後にちぅ…と音を出して吸い上げる。
「では、この傷も俺だけのものだな」
先程とは逆の方向から彼の唇があたる。左下から右上に、優しく柔らかい刺激が背中に落ちた。
「ん、あっ……や、」
「またかわいい声を出してくれるな、顔が見れないのが残念だ」
そして甘い唇が背中の中央にたどり着いた。ここで、彼は一度口づけを止める。
「七瀬は誰にも渡さない」
甘いけど、優しい炎を漂わせた独占欲が唇から漏れる呼吸と一緒に染みていくようだ。1つ1つキツめに肌を吸われ、痛みも少しあった。
「傷の近くに君が俺のものだと言うしるしをつけた」
「え……、それって」
息も絶え絶えになりながら振り向く。すると、彼が私の頬に手を添え、唇に温かなぬくもりを落とした。
「君と俺だけの秘密、と言いたい所だが。胡蝶には見られるかもな」
「もう、本当にいじわる……や、ん」
背中の傷をそっと撫でられた。低い声で囁きながら頬に置いていた手を胸に滑らせる。
彼はまた胸の蕾を優しく優しく、擦った。