第19章 獅子なる星が降る夜に ✳︎✳︎ +
「七瀬、俺を見てくれ」
彼は私の左頬をそっと包むと、ゆっくりと正面に向けてくれる。
「すごく緊張して来ました、すみません.」
「それは君だけではないぞ?」
そう言った彼は、私の右腕を掴んで自分の胸に当てた。
ドク、ドク、ドク。
先程からずっと早鐘を打っている自分の心臓の鼓動だけど、それと同じくらい速い音が私の掌に響いてきた。
「本当だ。同じですね」
「ああ」
良かった、私だけじゃなかったんだ。嬉しい……。
「傷、たくさんありますね」
彼の胸から肩に右手を動かして 、そこにある傷をそっとゆっくり触ってみる。最近出来た物ではなさそうだった。
「鬼殺隊に身を置いている限りは仕方のない事だろう?」
杏寿郎さんも私の左頬に当てていた手を下に滑らせ、鎖骨にある小さな傷を労うようにそっと、優しく触れてくれる。
そこ、確か初めての任務で怪我した所だ。
そして ———
「君の背中を見せてくれないか」
彼が私の瞳を上から覗き込みながら、言って来た。