第19章 獅子なる星が降る夜に ✳︎✳︎ +
ゆっくりと私から師範が離れていく。
彼の顔を見てみれば、先程と同じようにとても優しい表情を私に向けてくれていた。
「……七瀬、俺も君が好きだ」
彼に名前を呼ばれた。初めてだ。実感した瞬間、ドクンと一際高く心臓が跳ね上がる。
「本当に……?」
「こんな時にウソをついてどうする?」
「すみません……私の一方通行だろうなとずっと思っていたので、その……信じられなくて……」
師範も私を?どうしよう……嬉しい……涙出そう。
「態度には出していたと思うぞ?……とは言え、君の事が好きだと自覚できたのはここ最近だ。そう思われても仕方ないな」
私の目をじぃっと覗きこんでくる彼から目が逸らせない。熱量がじわっと伝わって来る。とても強い二つの眼差しだから。
「はっきり言ってくれないとわかりませんよ……女の人は言葉に出してもらって、ようやく“好き”を確信するんですから」
「そうか……」
思い人はそう呟いた後、今度はハッキリと言ってくれた。
「俺は七瀬が大好きだ」
大きな右手を私の左耳の下に差し込んだ後、再び唇で熱い思いを伝えて来る。
1回目と違い、2回目は強めに吸い付く口付けだった。