第3章 起きて進め
アオイちゃんは「大事な話のようだから、席を外す」
そう私に告げた後、退室して行った。
——— と言う事で。
今、この部屋には私と炎柱様の2人きりだ。
「…………」
「…………」
沈黙が5分ぐらい続く。やっぱり切り出すのは私からだろうか。
「ご挨拶遅れて申し訳ありません。初めまして、炎柱様。沢渡七瀬です」
丸椅子に腰を下ろしている炎柱様に顔を向けた後、ペコリと頭を下げた。
「煉獄杏寿郎だ」
頭を上げると、炎柱様は口元に少しだけ笑みを浮かべて名前を教えてくれる。綺麗に笑う人なのだな —— そう感じた。
「休んでいる所、すまなかった。胡蝶から今日明日には目を覚ますだろうと聞いていてな。任務前に蝶屋敷に来てみたらちょうど俺が着いた時に目を覚ました……と。だからここに来た」
ハキハキと滑舌よく話す彼だ。
「良かったです。すれ違いになったら申し訳なかったので………あの」
そう切り出す口元にやや力が入るのが、自分でもわかる。
「それで巧の言伝と言うのは………」
炎柱様は「うむ」と頷くと私を真っ直ぐ見据えた。
日輪のような瞳に見つめられると、なぜか鼓動が忙しない。そんな私に彼はこう言ってきた。
「剣士をやめるなよ………」
「えっ?剣士ですか?」
「ああ、そう言っていた」
「そう、ですか………」
私はふーっと深呼吸を一つ落とす。
そして、巧に言われた時の出来事を思い出し始めた ———