第19章 獅子なる星が降る夜に ✳︎✳︎ +
「そうですよね……」
再び夜空に視線をあげると、横にいる師範が私に聞いて来た。
「所でこれは一晩にどれくらい流れる?」
いつも冷静な彼の口調にやや興奮の色が混ざっている。どうやら興味を持ってくれているらしい。嬉しい!
気持ちが高揚した私は、前のめりになりそうなそれを何とか抑制しながら話しだした。
「しし座流星群には母天体と言って、元になる彗星があるんですけど。その彗星が太陽から遠い位置にあると、一時間に数個ぐらいしか見れないんです」
「彗星か……」
「はい。でも今日の様子だと、一時間に数千個は……流れるかもしれませんね」
「……凄いな!!」
「ええ、凄いんですよ」
私はふふっと笑う。それに太陽みたいな師範が戻って来たしね……なんて、心の中でこっそりと思う。
「君が星についてそれだけ知っていると言うのにも感心したぞ」
彼はうーむと唸って顎に手を置いている。師範のこの仕草、好きだな。
「ありがとうございます。星は小さい頃から好きなんです。天文学系の本は結構読み込んだんですよ」
それから、師範の方に向けていた顔を再度夜空に戻した。
今日こっちに泊まる事にして良かったな。心の底からそう思う。本当は自宅で観ようかと考えたりもしたんだよね。