第17章 恋柱、甘露寺蜜璃 +
「わっしょい!!わっしょい!……そうだ、千寿郎!あれを」
「はい、兄上。ただいまお持ちします」
「?(何だろう)」
煉獄兄弟が目で合図をしたかと思うと、千寿郎が廊下の奥へと消えた。五分後、彼が長方形の木箱を両手に持参しながら戻って来る。
「甘露寺、遅くなったが入隊の祝いだ!仕立てに時間がかってしまってな。申し訳ない」
「えっ、この羽織って……」
木箱に入っていたのは真っ白な羽織だった。
『師範と同じだ……!!』
蜜璃の脳内には幾度も任務に向かう際に見送った師範の後ろ姿だ。目頭がじわっと熱くなり、雫がほろりとこぼれ落ちていく。
そこへ杏寿郎が更に激励の言葉をかけた。
「改めて最終選別の突破、本当におめでとう!!僅か半年 —— たった百八十日で合格するとは……君は凄いな!! これからは師弟ではなく、同じ仲間として。共に歩み、精進していこう!!」
「師範……いえ、煉獄さん」
「うむ、何だ!!」
「本当に、本当にありがとうございます!私……精一杯頑張ります!」
うわあん、と次の瞬間。
蜜璃の大きな双眸から大粒の涙が溢れた。
「嬉し涙はいつ見ても、気持ちが良い物だな!」と言う杏寿郎の言葉に蜜璃の胸の中はたくさんのあたたかな気持ちで満たされていった。
ひとしきり涙を流した彼女はある事を思いつき、スッと立ち上がると廊下の奥に進んでいく。
「すみません、少し待っていて貰えますか?」
「ん?承知した」
数分後、蜜璃は鬼殺隊の隊服に身を包んで杏寿郎の前に現れた。
にっこりと笑顔を浮かべながら「ぴったりです!」と白い羽織を翻し、その場で一度回転をする。
「……甘露寺、何だ?その格好は!!」
「えっ??何かおかしいですか??」
彼女は珍しく狼狽する杏寿郎に驚いてしまい、自分の衣服をまじまじと見つめ直す。