第16章 甘露煮と羨望
——— それから3日後のお昼時。
『久しぶりに食事を一緒にしたい』と姉弟子からのお誘いだったので、よく行く定食屋の前で待っている所。
師範の継子になる前、行きつけの甘味処に行った時の事を私は思い出す。そこで蜜璃さんが大量の桜餅を食べていたのを未だに忘れる事が出来ない。
確か100個近く食べていたはず。
かわいい顔に似合わず、よく食べるし、力は強いし、明るいし、優しいし。しのぶさん同様、私の中で憧れている人なんだよね。
パタパタパタパタ……
「七瀬ちゃーん♡」
語尾からキュン!と音がするかのようなかわいい声で呼ばれたかと思うと、その人は私を思い切り抱きしめてくれた。
う、うーん。相変わらず熱烈……そして胸の弾力も熱烈……!
「もう!相変わらずかわいいわね!」
いやー、間違いなくあなたの方がかわいいですよ。
しばらくなすがままに抱きしめられていると、ようやく納得した所で体を離された。暖簾をくぐって店内に入ればたくさんの人が食事をしていた。
馴染みの店員さんが蜜璃さんにデレデレしながら席に案内してくれると、対面に座ってお互いお品書きと顔をつき合わせる。
「今日は何にしようかしら」
姉弟子はキラキラした目で、真剣に悩んでいる。
ふふ。食べるのが好きな所は本当師範と一緒だよね。
かわいいなあ、と年上だけど可愛らしい蜜璃さんにそんな事を感じてしまう。