第16章 甘露煮と羨望
「そうだな……」
鼻を指でかきながら何と言おうかと考えている様子。
「……になった……」
「ん?何?よく聞こえないよ……私が耳に手を当てた次の瞬間——
「恋仲になった!」
今度ははっきりと彼の口から発せられた。ああ、やっぱり!
★
竹林の中を私と炭治郎、そして霧雲杉の箱から出てきた禰󠄀豆子は走っていた。
見た目はほとんど人間と変わらない鬼を3体追いかけている。奇妙な血鬼術も特に使わないようなので、早く倒すに限る。
「全集中 ———」
私はスウっと呼吸を整えた後に鯉口を切り、抜刀した。
「炎の呼吸」
「弐ノ型・昇り炎天」
茜色の刃で弐ノ型を放ち、一体目の鬼を真っ二つに斬る。
「ヒノカミ神楽・碧羅の天」
炭治郎も体を捻りつつ、日輪刀を反時計回りに回して型を出し、目の前の鬼を斬り伏せた。
2つの太陽のような炎輪(えんりん)が私達の周りを明るく照らす。