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炎雷落ちるその日まで / 鬼滅の刃

第14章 蛇柱、伊黒小芭内 +




ある日。
今まで過ごしていた座敷牢から引きずり出されたと思うと、いやに豪華な部屋に連れて行かれた。


「小さいね、小さいね。やっぱりもう少しだけ大きく育ってからにしようか」

女が幼い彼を値踏みするように見つめる。
下肢が蛇のような鬼だ。恐怖を全身で感じる中、少年は口を切り裂かれた。鬼の女が口の形を自分と揃えると言った為だ。

小芭内の口元から流れた血液は盃に入れられ、鬼が恍惚の表情を浮かべて飲んでしまう。


「何て美味しい血なのかしら……うん、やっぱりこれより極上の味になる成長を待たなきゃ」


その後、彼の口元には包帯が巻かれた。
座敷牢に残された小芭内は逃げる事だけを考え続けていた。やがてこっそりと盗んだかんざしを使い、からくも屋敷から逃げた。

が、一族の者に気づかれてしまい、怒り狂った蛇鬼が追いかけて来る。


「小芭内!!待てぇ!」
『くそっ…ここで転ぶとは』


ずっと幽閉されていたのだ。少年の足には力が入らず、なかなか起き上がる事が出来ない。


「ダメよ、逃げるなんて。そんな事が二度と出来ないように両足をもいでしまおうかねぇ……」


鬼が長い舌で自分の唇を舐める。そして小芭内に襲いかかろうとした瞬間 —— 明るい炎がその場に舞った。


「炎の呼吸・壱ノ型 ——— 不知火!」
「ギャァ!!あ、あついィィ!」

ジュッと肉が焦げる音と共に、鬼の頸が胴体から切断された。
ゴト、ゴト……と鈍い音を立てて地面に転がったそれは、サラサラと砂が舞うように空気に溶け込んで消えていく。


「あ………あっ……」

小さく体を震わせる小芭内の前にフッと影がさした。
ゆっくりと顔をあげると、彼の前にひざまづいた一人の男がいた。
金色の髪に先程見た炎と同じ色の双眸。


「もう大丈夫だ。あの蛇の鬼は倒した……歩くのは難しそうか?」


ポン、と小芭内の頭に乗せられた大きな掌。そこからあたたかい温度がじわりと伝わって来る。


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