第8章 那田蜘蛛山
ちょうどその頃。
お館様の屋敷に美玖の鴉が到着していた。
鴉は、余程急いだのか、
ゼイゼイと息を吐きながらお館様の膝の上に座っている。
ー…よく頑張って戻ったね
私の子供たちは殆どやられてしまったのか
やはり十二鬼月がいるようだね
ー…柱を行かせなくてはならないようだ
…義勇、…しのぶ、、
お館様の後ろに控えていた二人が声を揃えて返事をする。
御意。
しのぶは冨岡に語りかけた。
人も鬼もみんな仲良くすればいいのに
冨岡さんもそう思いません?
無理な話だ。鬼が人を喰らう限りは。
二人は、お館様の部屋後にすると、
すぐ様那田蜘蛛山へと向かうのであった。
ー…
俺、嫌われてんのかな。
一人、山の麓で座り込み、
善逸は心の中で色々と考え込んでいた。
二人に置いていかれた事が悲しかったようだ。
普通置いていくか?仲間を道端に…
説得しない?仲間なら…
二人で説得してくれたらさ、
行くからね、俺だって。
一人心の中でグチグチうだっていると、
善逸の鴉ー…ではなく雀がチュンチュン鳴いている。
雀は善逸の事を励まそうとしていたが、
日本語を操る事ができず、うまく伝わらない。
チュンチュンと鳴いている雀に善逸は呟く。
いいなお前は気楽で…
何もわかんないよな、人間の事なんて
一生懸命に励ましていた雀は心外だったようで、
怒って善逸の手の甲を嘴で摘んで引っ張った。
いででででで!!
お前、可愛くないよほんとに!
鬼の禰豆子ちゃんがあんなに可愛いのに!
雀のお前が凶暴じゃ…
善逸は禰豆子の名前を口にした瞬間に思い出す。
炭治郎が、禰豆子を背負ったまま、
恐ろしい山の中へ入って行った事を…。
あいつ…!禰豆子ちゃん持ってった…!!
禰豆子の身を案じ、
少し遅れて善逸も山へと走っていくのだった。