第7章 焼芋
父上、杏寿郎です!
杏寿郎は居間を出て、
真っ直ぐ槇寿郎の部屋へ来た。
焼き芋も勿論だが、
先程、鴉が父の元に来ていたので、
何かあったのかと気になっていたのだ。
おお!杏寿郎か、入れ!
父の声を聞き、
襖を開けて中へと入る。
父上、今日は庭で焼き芋をしました。
良さそうなものを取っておいたので、
どうぞ、召し上がって下さい。
槇寿郎用に用意された焼き芋は
10本くらい、大きいものが積まれていた。
…杏寿郎、良かったらお前も食え。
…!いいのですか?父上!
いいも何も、俺はいい歳だ。
さすがにこれだけの芋は食えん!
槇寿郎と杏寿郎は、
軽く笑い合うと、芋へと手を伸ばす。
温め直してあったので、
出来立てのように甘みがあり美味だ。
結局、あっという間に平らげ、
お茶をすすりながら杏寿郎が口を開く。
父上、先程ここに、
お館様の鴉が来ていませんでしたか?
…!見ていたのか…。
はい。偶然目にしまして…。
何か、悪い知らせでも…?
大したことではない。
少し、相談したい事があるようでな。
近々、お館様の屋敷を訪ねる事になりそうだ。
…!
わざわざ呼び出されるとは…。
何か、嫌な予感がする…。
槇寿郎は、眉間にシワを寄せる杏寿郎の額に
己の人差し指を当てると、
ふっシワが寄ってしまうぞ。
何、大した用事ではないだろう。
それに、俺もお館様には、
しっかりとご挨拶せねばと思っていたところだ!
心配するな、と
槇寿郎は明るく笑った。
杏寿郎は、微かに表情をやわらげると、
何かあれば、
俺にも頼って下さい。
と言って部屋を出ようとした。
ああ!ちょっと待て、杏寿郎。
お前に一つ聞きたい事があってな。
はい!なんでしょうか、父上!
杏寿郎は父の向かいに座り直し、姿勢を正した。
杏寿郎、お前、
美玖の事をどう思っている?
当然、家族のように過ごしていたのだから、
大事に思ってはいるんだろうが、
女として見た事はあるか?
……っ!
父上、またその話ですか。
俺はまだ、嫁など取るつもりはありません!