第1章 継子
そう言うなり、
パタパタと廊下を駆けて行った。
ふっ…
全く、騒々しいな。
杏寿郎は、そう呟いて自室で待っていた。
思えば、自身の継子で、
最終選別まで逃げ出さなかったのは
美玖と、甘露寺くらいなものか。
本当に、よく頑張った。
物思いにふけっていると、
襖の向こうから美玖の声がした。
着替えが済んだようだ。
し、師範…
その、隊服、、
着てみたのですが…
うむ!そうか!
では、こちらに来るといい!
襖の向こうへ声を掛けるが、
美玖はなかなか入ってこない。
?
不思議に思い、立ち上がる。
美玖?
どうしたというのだ?
そのまま襖に手をかけると、
…開かない。
どうやら美玖が押さえているようだ。
何故そのような行動に出たのか
定かではないが…
腕力で美玖に負ける筈もない。
そのまま、腕に力を込め、
勢いよく襖を開く。
俺の羽織りを身に纏った、
美玖が立っていた。
が、
美玖、
なぜ羽織りを巻いている?
しっかりと真正面から見せてくれないか?
何故か、顔を真っ赤に染め、
俺の横を通り、部屋の隅に座りこむ美玖
俺は訳がわからず、
美玖の後ろにしゃがみ、
こちらをむかせる。
美玖?
一体どうしたというのだ?
俺に見せたくはないのか?
俺は、最終選別を突破した、
弟子の晴れ姿を楽しみにしていたのだが。
そう、自身の胸の内を明かせば、
意を決したように美玖が立ち上がる。